法華経八の巻をお迎え
今回のエントリーのタイトルにある「法華経八の巻」とは、釈尊の教説の極意が説かれているとされる「法華経」(妙法蓮華経)全28品(=「章」)を、八つの巻物に収めた経巻です。
日蓮宗では、「法華経」を「所依(しょえ)の経典」として信仰の対象としており、寺院の本堂では、本堂正面の導師席の脇などに、経巻や折本の形式の法華経一式が配置されています。
一般家庭では、法要や日々の勤行で使用する主要な品、節を抜粋した一般檀信徒向けの小冊子が、お寺から各檀家に配布されることが多いようです。
⭐︎経巻形式の八巻本法華経の数々
※奈良国立博物館収蔵品データベース「重要文化財 法華経 巻第一~巻第八」
⭐︎折本形式の八巻本法華経
※折本の形式の法華経(千葉市若葉区・青雲山妙恩寺Webサイトのコンテンツ)
以下は、法要や日常の勤行で使用する主要部のみを収録した檀信徒向けの常用経典集。左は、棚経でお世話になっている水上山妙光寺からいただいた折本。右は、どのような経緯で我が家に来たかは不明ですが、曽祖父の代からわが家に伝わる木版摺(ずり)の折本。
左は大八木興文堂の印刷(発行が妙光寺)、右は、曽祖父が白紙を継ぎ足し、御妙判を筆写するなどの加工を加えた折に奥付ページをカットしてしまったらしく、残念ながら版元不明。タイトルの文字も、擦り切れて読めなくなってしまっています。
平楽寺書店から刊行されている『妙法蓮華経要品』(/ 改正訓點句讀清濁 真読大型(かな無)紙表紙)と目次ページや凡例、「序品第一」などの文面がよく似ている(上記リンク先の2枚目の写真などを参照)ので、こちらも平楽寺書店の刊行かも。
大八木興文堂、平楽寺書店とも、日蓮宗の経本の製造元, 出版・発行元として有名な書店です。
折本形式の経本は、以下のような形で折りたたまれていて、右から左へと読み進めていきます。
「身口意の本尊(しん く い のほんぞん )」という考えがあります。
「身の本尊」=仏のお姿。仏像・仏画
「口の本尊」=仏のことば。経典。
「意の本尊」=仏の心。仏塔など。
日蓮宗家庭の仏壇でいうと、「身の本尊」は「三宝尊」のうちの釈迦如来と多宝如来、「口の本尊」は法華経、「意の本尊」は「三宝尊」のうちの題目塔ということになるかと思います。大曼荼羅は…。これら全てを包摂し、超越している存在?た
我が家では、「口の本尊」としてお祀りするのは右側のもの、法要や日々の勤行などで読誦に使用するのは左側のものを用いてきましたが、先日たまたま「宗教工芸(寺院用具・仏壇仏具・別誂修理一式))極楽堂」という仏壇・仏具店のWebサイトで、一般家庭用の超小型「八の巻」・経机のセットが展示されているのを見かけたので、このたび、これをお祀り用としてお迎えすることにいたしました。
横幅60mm、奥行58mm、高さ35mmの小さな帙(ちつ)に収められています。
→ 極楽堂さんの通販サイトはこちら
極楽堂さんは、神戸市兵庫区西上橘通に店舗を構えておられる仏壇・仏具点です。
→ 会社概要
価格は、平成28年(2016)7月の購入時点で、経巻が¥8,856(税込)、経机が¥7,884(税込)。
経巻の端は経巻本体に糊づけされていて、さらに上下は金箔で葺(ふ)かれており、中を見るには、巻物を傷める覚悟で剥がさないといけません。
中身を確認できないので、極楽堂さんに『商品説明に「中にはちゃんと法華経が印刷されています」とあったのですが、本当に印刷されているのでしょうか』とちょっと失礼な質問メールを送ったところ、とても丁寧なご返信メールをいただきました。以前に店長さんが開封なさった経巻の写真を送ってくださったほか、八の巻の各巻に収録されている経文の内容・構成を調べて教えてくださったのです。
この経巻の文字は、こんな感じです。
( 以上の1枚は、極楽堂さんのサイトから、許可をいただいて転載させていただきました。7月末〜8月初旬に改定された現行の「商品説明」にも、上記の写真を含め、開封状態の経巻の写真が3点掲載されています。)
全八巻の内容は、
巻一:
序品第一・方便品第二
巻二:
譬喩品第三・信解品第四
巻三:
薬草喩品第五・化城喩品第六・授記品第七
巻四:
五百弟子受記品第八・授学無学人記品第九・法師品第十・見宝塔品第十一
巻五:
提婆達多品第十二・勧持品第十三・安楽行品第十四・従地涌出品第十五
巻六:
如来寿量品第十六・分別功徳品第十七・隨喜功徳品第十八・法師功徳品第十九
巻七:
常不軽菩薩品第二十・如来神力品第二十一・嘱累品第二十二・薬王菩薩本事品第二十三・妙音菩薩品第二十四
巻八:
観世音菩薩普門品第二十五・陀羅尼品第二十六・妙荘厳王本事品第二十七・普賢菩薩勧発品第二十八
(以上、極楽堂さん調べ)
もともと極小サイズの経巻で、写真にも見えるように、上下幅が58mm(二寸弱)の紙に、上下の余白を加え1行あたり18~20文字。もし開けた場合でも、文字は非常に細かく、日々の読誦( どくしょう)に用いるにはまったく向かないでしょう。純粋に、お供えしてお祀りするための経巻と言えるかと思います。
この経巻は、極楽堂さんの製造ではなく、京都から仕入れておられるとのこと。
よその仏壇・仏具店でも扱っているところが他にあるかもしれませんが、ネット通販では、極楽堂さんのサイト以外では見かけたことがありません。